星くず英雄伝(1) 「放浪惑星の姫君」


星くず英雄伝(1)
「放浪惑星の姫君」

イラスト 平井久司

メディアワークス刊
ISBN4-07-305426-0
定価580円(税込)
334ページ、192g

 初の完全オリジナル作品。
 ヴァルツアーの紋章の下巻を仕上げてから、ずいぶんと間が空いたような……。
 企画書を書くのに1年以上もかけて、編集部に持ち込みOKを取りつける。企画書段階で、すでにプロットやら、さらに細かいシノプシスまで完成しているという状態。
 荒めのプロットが出来た時点でケツ叩かれて執筆スタートしている現在じゃ、考えられないなぁ(笑)。
 スタートした時点では、全5冊のシリーズとなることが仮決定。
 ちなみに『企画書』に書かれた煽り(本の紹介文)は、こんな感じ。


「勇者様、どうかわたくしの星をお救いください……」

 僕……もとい、オレの名はジーク。
 すがるような瞳で訴えかける彼女の名は、ラセリアっていうんだ。正真正銘の姫様なんだぜ。恥じらいと慎みをどこかに忘れてきたような、うちの女社員どもとは違う。だんぜん違う!
 だけど宇宙海賊だのマッド・サイエンティストだの、そういうことなら《ヒーロー》に言ってくれ! オレはただの運送会社の社長なんだから!

 舞台となるのは、《ヒーロー》の実在する荒唐無稽な宇宙。ひとりの女の子のために、《ヒーロー》でもなんでもない少年が立ち向かう大冒険! 新感覚スペース・オペラ、ただいま登場!


 銀河を気ままに移動する惑星サイズの巨大生物《星鯨》と、その体表面上に栄えた会社組織『マツシバ・インダストリー』が舞台となるスペオペ。

 SF的大道具としては、『放浪惑星』こと《星鯨》とか、国家規模にまで成長した惑星企業マツシバ・インダストリーとか。
 小道具としては、《完全剛体》(物理で仮定の物質として出てきますね〜)とか、《力素》=エネルギーとか。
 あと《ヒロニウム》なんかも、もちろん大切な小道具。

 シリーズの狙いとしては、古いスペオペの復活。レトロっぽい雰囲気をどこかに残しつつ、今風なスペオペにアレンジしてみようという試み。

 こだわるべきは、SFの持つ『センス・オブ・ワンダー』と、あと女の子の魅力。
 ボーイ・ミーツ・ガールでもって、センス・オブ・ワンダーの溢れる冒険でもって、そして最後はハッピーエンド。
 やっぱ、これでしょう。

 自称『姫君』のラセリアは、その会社=マツシバインダストリーの社長さん。
 《星鯨》の巫女にして、時詠み(未来予知)の能力の持ち主にして、社長にして姫君だったりする。ただし『姫君』のほうは自称。
 16歳という若さで200億人の社員を抱えて、しかも国(というか会社)は宇宙海賊に狙われていて、しかも社内は権力闘争でドロドロしていて大変なんだけども、ぜんぜん悲壮感を感じさせない肝の据わった女の子。

 たいへんな大荷物を背負っているのに、泣き言ひとつ言わないで頑張っている。そんな娘がいたら、手助けしてやりたくなるじゃないですか。

 そんなわけで、1巻はジークが女の子を助ける話。



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